ball-ball

yokohama-kukan2007-10-22

陽がさしている
秋の終わりにしては強い陽ざしだ
僕はこの陽の下でコーヒーを飲むことにした
近くのコーヒーショップで挽いてもらった
スラウエシ島のコーヒーをセットする
僕はこの酸味がほとんどなく力強いコーヒーが好きだ
ドリッパーにお湯を注ぐ
まるでカップケーキのように表面が膨らみ
それにつれてキチンにコーヒーの香りが満たされてくる
この瞬間、僕はもう一口目を口にしたような気がしている
コーヒーを飲むという行為の中で
このときのコーヒーの香りが一番おいしいのかもしれない


コーヒーを楽しみながら雲を眺めていると
電話が鳴った
相手は古くからの友人であった
「今、時間はあるのかい?」
「コーヒーを飲んでいるだけさ」
「これから行く」
「待っている」
電話は切れた
これから来る友のために僕はキチンへ戻った


やってくるなり彼は言った
「でかけよう」
「コーヒーをいれるよ」
「すまないがあとにしよう」
「どこへ行くんだい」
「いつもの公園さ」
我々が幼いころから親しんでいる運動公園へむかった
彼は羽織っているマウンテンジャケットのポケットから白いボールを取り出した
「キャッチボールをしよう」
「グラヴがないよ」
長年使用してきたRawlingsのグラヴは処分してしまった
「平気さ」
そう言うと僕にボールを放った
手に取ると
見た目は硬式野球のそれだが柔らかい。
しかし手触りや縫い目は硬式風であり
重さもある程度あり投げやすそうだ

「キャッチボール用ボールなんだよ」
「キャッチボール用ボール?」
「そう、グラヴなしでも使えるボール」

それからしばらくキャッチボールを楽しんだ
最初は軽く
次第にに熱がこもってくる
ストレート、カーブ、ゴロ、ちょっと高いフライ。
蒼空に吸い込まれ影になり
やがて重力に負け僕の手の中で再びボールになる
その繰り返し。

掌が熱を帯びる頃、どちらからともなく距離を詰め始め
最後にボールを手渡ししてキャッチボールは終わった。


「楽しかった。またやろう」
僕の入れたコーヒーを飲み終わると
彼はそう言って
パッセンジャー・シートにボールを置き
黒いHONDAで帰って行った。

見送った空に昼月が微笑んでいた。



a day in late autumn. zenny




本日のBGM     Trouble - Manic Frustration






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