暮らしについて

【 -第113回- 2016年4月18日号】



今、「BEAMS at HOME」という本(写真集)をながめています。
ビームスで働くスタッフの「暮らし」と「服」を紹介している本です。
オシャレな人達は暮らし方(家)もオシャレなのか?
一応、建築と不動産を本業としている私の感想としては、皆さんオシャレというより、「自分の好きな物」に囲まれて暮らしているという感じでしょうか。

そもそもオシャレかどうかは、主観的なことですから、「自分の好きな物」に囲まれていれば、それでOKですよね。

ただ、こだわらないのはダメ。
オシャレとはこだわり。
もう一歩進んで、こだわらないように見せているこだわりこそオシャレだと思っています。

お金持ちの家を拝見するテレビ番組で、奥様のクローゼットはブランドの服やバッグでいっぱい。ところが、ほとんどの服はクリーニング店で使っているようなハンガーに吊るされている。
「絶望的にセンスがないよ、奥さん」
と思ってしまいます。
今どき100均ショップでも、しっかりしたハンガーを買えます。
プラダやディオールの洋服にクリーニング店のハンガーはまずいでしょう。

オシャレに暮らすのに持家も賃貸も関係ありません。
もちろん、持家の方が自分の好きなようにお部屋をリフォームできますが、好きな物に囲まれて暮らすのが、オシャレで快適だと考えれば賃貸でも問題ないですよね。

20歳代の頃、約4年間、神戸に住んでいました。
神戸のターミナル駅「三宮駅」からほど近い、公団住宅、築30年以上、家賃4万円以下。
ダイニングキッチンと畳部屋の1DK、約30平米の賃貸マンションです。
友人達が遊びに来ると、皆がこの建物は「犯罪の匂いがする」っていうくらいマンション全体がうす暗く怪しい建物でした。
当時の私は今の仕事ではなく、スポーツメーカー勤務の会社員です。
当時の給料では、利便性のいい場所には住めませんでしたが、運良く公団住宅の抽選に当選して、怪しい建物に住んだのです。

当時のデザインの流行は「モダンデザイン」80年代の流れでフィリップ・スタルク、アンドレ・プットマンなどが全盛期です。
最初に畳の部屋と襖、障子を見た時、呆然としましたよ。正直。
オレのお気に入りの黄色のフィリップ・スタルクのテーブルが畳の上でガタガタと不安定に置かれるのかと思うと泣けてきました。
今でそこ昭和的な良さがカッコいい部分もありますが、当時はリアルな昭和でしたから。
ジャケットに大きな肩パットがしっかり入っているような時代でしたから。
でも、私はくじけませんでしたね。

まず、ダイニングから畳部屋まで採寸して、びっしりとオレンジ色のカーペットを敷きました。
靴は脱ぎません。
家中、土足で生活ですよ。
靴脱いだら、フィリップ・スタルクが台無しじゃないですか。
障子を外して、グレー色のブラインドを付け、襖は勝手に自分で白黒の市松模様の模造紙を張りました。
気分は雑誌で見た、当時最先端のデザイナーズホテル。ニューヨーク「モーガンズホテル」です。

土足で生活したことありますか?
結構大変です。
私は1ヶ月で挫折しました。
カーペットをきれいに掃除して、大人しく靴を玄関に置いて、普通に暮らしました。
オシャレとはこだわり。
こだわりにはやせ我慢も必要。
でも妥協も必要だということを学びました。

自分の好きに暮らす。
家は一日の1/3以上を過ごす大切な場所です。

巨匠も言っています。

「家は生活の宝石箱でなくてはならない」
ル・コルビュジェ

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