勝利の方程式

【 -第69回- 2014年6月30日号】




かつて野球の世界に
 「勝利の方程式」ということばがあった。
 試合の後半、中継ぎと抑えのいい投手がいて、
 その3イニングはもう相手に得点を与えないということだ。
 なにが方程式なのかはわからないが、
 6回まで得点をリードしていれば、
 相手に得点を与えないから、必ず勝つという考え方だ。

 いま、おちついて考えたら、はてなと思う。
 この「勝利の方程式」をことさらに言うことは、
 「6回までの野球」をやりたいということではないか?
 つまり、7回以降のことは考えたくないとも言える。
 思考停止したいんだよね、ということにもならないか。
 いや、先発投手が完投するのが基本というその当時には、 
 とても斬新な考え方だったのだけれどね。
 
 野球だけじゃなく、いまやることのすべては、
 「何が起こるかわからない」ということについて、
 どうとでも対応できるような姿勢を保っていることが、
 とても重要になっている。

 とにかく、ずっと変化は止まらないのだ。
 そう考えながら監督をしていったり、
 経営をしていかなくてはいけないのは、
 いまや常識になっているとさえ言える。
 どこかの社長さんが「勝利の方程式」を掲げて、
 それで事足れりとしていたら、
 やがて、なにかがひっくり返るかもしれない。
 サッカーワールドカップをやっているいまだから、
 なおさら、それが実感しやすいのだろうか。

 「ここからは考えなくていい」という状態になりたくて、
 そこまで必死に考えていく‥‥というのが、
 いままでの方法だったように思う。
 しかし、いまは「考え続ける」ことそのものが、
 動きに組み込まれているような方法が必要なのだ。
 それをするためには、「考え続ける」ことそのものが、
 「たのしみ」であるようにできたら、いちばん強い。
 弱いときにしか考えられないことがあるし、
 劣勢のときにしか経験できないこともある。

(ほぼ日刊イトイ新聞 糸井重里 今日のダーリンより)


学生の時、よく遊びに行く友達の家にファミコンがあって、当時流行っていたゲームをひと通りやったのだけれど、そのゲームソフトの中にアメリカンフットボールのゲームがありました。

ファミコンを相手にするか、AプレイヤーBプレイヤーで対戦するか選べました。
ある時、100%パスが通って、100%タッチダウンができる操作を見つけました。
今のソフトでは考えられませんが、当時のソフトのレベルですから、いわゆる欠陥だったのかもしれません。
とにかく、ファミコン相手だろうが、対戦者相手だろうが、絶対負けないのです。
私が20歳の時の話です。

それから、社会に出てからも、「仕事でもアメフトゲームの常勝操作を見つける」ことを馬鹿らしいくらい真剣に考えていました。

自分で会社を興した後も考えていました。

まさに糸井さんの言う「ここからは考えなくていい」という状態になりたくて、
そこまで必死に考えていく‥‥。
という思考そのものです。

そして、やっと35歳くらいになった頃でしょうか、「世の中に常勝の戦術などない」と気づきました。
ほんの一瞬の勝利の方程式はあるのかもしれませんが長くは続きません。
そして、常に考え、進化したとしても、環境の変化や不運な出来事に見舞われて、勝ち続けられないこともあるでしょう。
いわゆる“成功体験”というヤツは勘違いすると簡単に“勝利の方程式”に結びついてしまうのかもしれません。
糸井さんのエッセイを読んで、絶対に負けない戦術を見つけて自慢げに振舞っていた自分を思い出しました。




追記・・・・・
現在の社会環境では、一瞬立ち止まっただけで、置き去りにされます。
これからも、変化のスピードは、ますます速くなるのでしょうね。

たまに、「このまま停止して次の波がくるまで待つのもいいかも」なんて考えたりします。
「動かない時計も1日に2回、時間が合う」戦法です。

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