傘の思い出

【 -第170回- 2018年7月9日号】




雨が降ると、思い出すことがあります。

傘は、いつも、コンビニで売っているビニール傘を使っています。
「いつも」と言うように使い捨て感覚で傘を買っています。
ちょっと大きめの傘がいいですね。

会社員時代、東京から神戸に転勤が決まりました。
「関西人に舐められたらいけない」
そんな思いもあったのでしょう、
二子玉川のビームスで3万円くらいの傘を買って神戸に持って行きました。
傘の柄が樫の木でイギリスのジェントルマンが持っているような傘でした。

神戸での最初の住まいは、神戸の中心「三宮駅」から電車で20分ほどの駅にある、会社の寮でした。

住まい始めて1、2日後だったと思います。
雨が降っていました。
ジェントルマンの傘を持って、寮の近くの郵便局に行きました。
傘を入口の傘立てに入れて、切手を買って、郵便物を出して、5分も経っていません。
入口の傘立てにジェントルマンがいません。
最初に使った日に、一瞬で盗まれました。

寮に帰り、「傘、盗まれました」と寮の管理人さんに話したところ、
「あたりまえちゃうん」
暖かい神戸弁で慰めていただきました。

寮のあった街は、神戸でも有名なヤンチャな方々が多く住んでいる街で、すでに立派な雰囲気が漂っている小学生も多く見かけるような街でした。
「○○じゃん」なんて言葉を使ったら、身の危険を感じるような視線を浴びます。

そんな街に1年間住んで(それなりに楽しく過ごしたのですが)、三宮駅からほど近いところに越しました。

私も懲りないんですね。

三宮のビームスで、また傘を買いました。
「三宮はちがう」
そんな思いもあったのでしょう。

買って、最初の雨の日に、ポートアイランドにある会社にさしていきました。
会社の近くには某大手アパレル会社、ホテルなどがあり、寮がある街とは、意識の高さが違います。

その日は会社の食堂ではなく、近くの飲食店街で昼食をとる事になり、ジェントルマン2号をさして、お店の入口の傘立てに入れました。
そして昼食後、皆様の予想通りに傘立てにはジェントルマン2号はありません。

会社の同僚は笑ってる訳です「アホちゃうか!」
当時は心底、関西人のモラルのなさというか手癖の悪さに怒ったと記憶しています。

しばらくは、会社で「3万円の傘、2本も盗まれた」って笑われていました。

不幸をも笑いに変えるセンスにも唖然としましたが、人は順応するんですね。

そんな笑いも心地よくなるんです。

マジメに悲しむより、笑って過ごした方が楽に暮らせることを学びました。




追記・・・・・
自分の不幸は、いいネタになります。
いいネタは、人間関係の潤滑油になりますよね。

一昨年、大阪・北浜の気取った今時のカフェに行きました。
コーヒーをオーダーしている間に、買ったばかりのビニール傘を秒でパクられました。

刺激がある街です。

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