プロレス的演出

【 -第243回- 2021年5月24日号】





世界最大のプロレス団体はWWE。
2位が新日本プロレス。
先日、ネットニュースで、新日本プロレス躍進の記事を見ました。

2000年代初頭の総合格闘技ブームに押されて、すっかり人気がなかったプロレスですが、今、盛り上がっているようです。

私が中学生70年代後半は、週末のゴールデンタイムでプロレスを放映していました。
全日本プロレスは日テレ。
新日本プロレスはテレ朝。

当時は、アントニオ猪木率いる、新日本プロレスの方が人気が高かった。
すでにベテランの域を超えている、ジャイアント馬場の細い腕。
相手をロープに投げて、投げられた相手が自分から、ジャイアント馬場の足にめがけて当たっていく、必殺16文キック。
それで、メチャクチャ痛がって、「ワン、ツウー、スリー」だもの。
中学生であっても、あまりに興行的な戦いに笑ってしまったものです。

それに比べて、新日本プロレスは、アントニオ猪木とタイガー・ジェット・シンが血だらけになるガチ感、そして、スタン・ハンセンの圧倒的なパワーに興奮しました。
その後、スタン・ハンセンは全日本プロレスに移籍しましたけど…

大昔、力道山の時代からプロレスは、ヒーロー役とヒール役が決まり、ヒール役がヒーロー役を痛めつけるも、最後にヒーロー役が勝つ王道ストーリーで成り立っています。
私がプロレスを見ていた時代も、そんなヒーロー対ヒールの戦いで盛り上がっていました。

その後、ちょっと複雑化して、新人がベテランに噛みつくような、組織内抗争が勃発するような演出がでてきます。
新人がベテランに挑戦し、何度か返り討ちにあいながら、力をつけ、認められる流れです。

いずれにしても、敵役を作り、遺恨などの伏線をはりながら、戦いを盛り上げていく。
お互いが、演出で憎みあっているのかどうか、わからないほど揉めれば、プロレス冥利につきる抗争です。

私は、プロレスファンは、レスラーの超人的な肉体、技、だけでなく
演出を含めたストーリーを 楽しめる高度な趣味性を持っている人々だと思っています。
演出とわかっていながら、それを楽しめる。
また、演出する方も、あうんの間合いで演じる。
見る方、演じる方の双方が、わかり合って楽しむ。
プロレスは「粋」な娯楽です。

そして、このような、プロレス的演出は双方がわかっていないと、とても危険なものだと思うのですが、近年、実社会でプロレス的演出が目につきすぎます。

ちょっと古くなりますが、小泉純一郎が総裁選に立候補した時、「自民党をぶっ壊す」
と宣言し、圧勝しました。
その後、官僚をヒール役にし、高支持率を維持しました。
政治の世界に、プロレス的演出を持ち込みましたよね。

某都知事も、ヒール役設定とマイクパフォーマンスに長けていると思いますし、前米国大統領は、WWEの興業に参加していた本物ですから、笑。

ユーチューバー同士の争いや、炎上マーケティングもプロレス的演出の匂いがしますよね。

プロレス的演出は、人気獲得の古典的な手法です。
ヒール役を見つけて、攻撃するだけで、成り立ってしまいます。
そして、ルールもモラルもない。
言ったもん勝ち的な世界です。

だからこそ、実社会を興行的にされてしまっては、たまりません。
踊らされることなく、演出か、どうかの見極めが必要だと思いませんか。

70、80年代のヒール役のレスラーは、入退場時に観客に向かってパイプ椅子を投げつけたりして、みんな逃げていましたよね、笑。
キレ芸だったのでしょうが、レスラー、観客どっちも真剣でした。




追記・・・・・
現在の格闘技の興行は、不良たちの喧嘩自慢からモンスター井上尚弥まで多種多様化しています。
格闘技の種類やレベルに違いがあっても、盛り上げの基本はプロレス的演出です。
しかも、レベルが低くなるほど激しく演出します。
これは、実社会の演出も同じ。

実社会の演出とは距離をとり、巻き込まれることなく、楽しめる人になりたいと思っています。

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